塩山探検ルポ>>ワイナリー

ワイナリールポ その1
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     ワイン作りは終わることのない挑戦。それを支える力は家族や同業者の連帯感にあった。    
     
    ▼ワインのマーケティング    
機山洋酒工業のブランデー蒸留器  

 奥野田葡萄酒醸造の 中村さんは、これからのワイナリーに必要な知識をこう語る。
 中村:ワインの醸造学にブドウの栽培学をプラスした知識を生かす職業『エノログ』としてぼくらは働いています。
 エノログ(oenologue:フランス語)とは、まだ日本国内に浸透していない単語だが、ギリシャ語でワインを意味する「オイノスoinos」が語源といわれる。学位を納めた者のことを「エノロジスト」とも呼ぶ。
 ワイナリーにとって、栽培技術を把握することは重要な要素だという。ブドウの種類はもちろん、ブドウを畑に植える方向・密度、株の高さ、剪定方法、病気の予防、土壌作りなど、それらがワインの品質や出荷量を左右する。
 奥野田葡萄酒では、畑を毎日管理する専任の人員を用意する。また、顧客60人が2日がかりで苗を植えた畑もあり、ワイン作りの楽しさを広げている。

 機山洋酒工業では、3300坪のブドウ畑を擁し、スパークリングワインやブランデーの製造販売にも意欲的だ。
土屋:畑は、会長である父が主に管理しています。新品種をいろいろと試したいところですが、ワインの製造サイクルは、とにかく長い。 新たに植えた品種のワインが評価できるようになるまで、2年以上かかってしまいますから。

 一つの完成された味の裏には、多くの苦労がある。人が焦って動いても、いいワインがすぐにできるわけもない。
 中村:ぼくらの仕事は、のんびりしているように見えますが、ぼんやりしていられません。地球上での大きな味のトレンドにも、ついていかなければならないからです。

 味のトレンドとは、ワインマーケティング学をもとに、はじき出される嗜好の波だという。人は、食に合うワインを欲する。
 中村さんによれば、バブル期は日本食の影響を受けて世界的にワインはライトな味が流行し、90年代はアメリカの味覚としてフルボディの隆盛、そして今は、ヨーロピアンテイストに合わせたものに移行しているという。
 そのグローバルな波に乗れるか否かでワイナリーの戦略が変わり、売り上げに大きく影響するというのだ。

 

  奥野田葡萄酒醸造のブドウ畑
    ▼連帯感が日常を支える    
機山洋酒工業の土屋ファミリー

 

   世界的な味のトレンドに乗り遅れないようにするために、どんな工夫をしているのだろう。
 まず、塩山市内7つのワイナリーでつくる『塩山ワインクラブ』では、横のつながりを重視し、情報を持ち寄って助け合っているという。
 ワイナリーごとに環境や規模、考え方の違いはある。そこを尊重しながら互いに前進しているのだ。

土屋:狭い地域、同業者の隣同士で喧嘩をしている場合ではないのです。世界が相手ですから。

 そしてもちろん、インターネットを使った情報収集も欠かせない。良質の情報を得るためには、自らも良質の情報を発信し続けなければならない。その意味でも、この2社は、ITを先取りしている。

 メール処理は日常のこと、両社のホームページも息が長く、若女将同士の温かい交流までも伝わってくる。実際、両家族とも夫婦円満で、華やいだ雰囲気が感じられる。

 世界を相手に戦い続けるワイナリーの原動力はつまるところ、オーナーの体である。
土屋:職業病は腰痛。重いものを何度も運ぶので。
 稼ぎ頭を支える『内助の功』があっての日常なのだろう。

 

つづく

  奥野田葡萄酒醸造の中村夫人

 

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