塩山探検ルポ>>ワイナリー

ワイナリールポ その1
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     テイスティングルームとワインセラーを見学。ワイナリーごとに特徴がある。    
     
    ▼テイスティングルームで    
機山洋酒工業のテイスティングルーム内    奥野田葡萄酒醸造(中村)と機山洋酒工業(土屋)のテイスティングルーム内の様子を見てみよう。

 奥野田葡萄酒醸造のテイスティングルームは、建物2階にあり、木造のロッジ風だ。大きなテーブルを囲んで、話の一体感が生まれる。取材当日は、地元で英会話教室をしているご夫婦のもとでワイナリーに興味を持っている娘さんと、岩手県からワイナリーオーナーを目指している公務員の方達も来ていた。同じワインを通して見知らぬ者同士でも話を弾ませられるのが、このワイナリーの魅力である。
 オーナーの中村さんは、河口湖町出身で10年ほど前に塩山へ独立してきた。国内のワインメーカーで働いていた経験が生きているという。
 テイステイング(味見)の方法を教わった。10ccほどを口に含み、うがいをするような感じで口の奥から唇の裏側までを何度か反芻しながら息(香り)を鼻に通す。
 中村:渋みは、歯茎で感じると言います。赤ワインは湿った土のような味がしますが、この複雑な味覚を出すのに苦労するんです。 それもワインの長い歴史の中で培われたものです。
 日本人の感覚では、単純明快で飲み心地よさそうな味を好みそうだが、世界的に見ると、ワインはより複雑で凝縮感のあるものが良いとされているという。 奥野田葡萄酒では、木の樽の香りが濃く漂うワインも販売している。

 機山洋酒工業のテイスティングルームは、洋風レストランの趣で、テーブルが幾つか並び、団体でも入れる広さ。武田信玄の菩提寺として有名な恵林寺(えりんじ)の近くである。『機山』も信玄の別名・機山公から取ったもの。販売しているワインは、簡易包装に 努めているのが特徴的だ。1.8リットル瓶に入った徳用のものもあり、リーズナブルな感じを受ける。
 オーナーの土屋さんは、3代目になる。
土屋:この一帯は、かつて養蚕が盛んだった土地です。蚕の餌になる桑の畑が一面に広がっていたと思います。祖父が新しい作物をいろいろと模索し、ブドウの栽培とワインの醸造をなりわいとするようになりました。
 土屋さんが本格的に家業を継ぐようになったのは、7年ほど前だったという。

 両社とも、個人の顧客をメインに、酒販店やレストランと提携して販路を広げている。観光客相手ではないので、顧客管理が重要になる。

 

  奥野田葡萄酒醸造のテイスティングルーム内
    ▼ワインセラーで    
機山洋酒工業のワインセラー


機山洋酒工業のワインセラー内のワインボトル

    この2社では、ワインを寝かせておくワインセラーも見学できる。ワインセラーに保管されている段階では、まだボトルにラベルが貼られていない。その整然と並んだボトルは、光に照らされると宝石のように輝く。

 奥野田葡萄酒醸造のワインセラーは、半分ほど地下室になっている。15度前後のひんやりとした室温が最適だという。
中村:ワインは瓶がリサイクルできるし、コルクも土に還る。実は環境にやさしい飲み物なんですよ。

 機山洋酒工業のワインセラーは、テイスティングルームの地下と、地上の倉庫の2箇所にある。長期間、じっくり寝かせることでボトルの中のワインの味 が変化する。
土屋:その変化は人にとって『おいしい』と感じれば『熟成』ですが、『おいしくない』と感じるのなら逆に『劣化』と呼ばれます。なぜ、どのような仕組みで味が変化するのかは、まだ科学的に完全には証明されていないようです。
 また、本当はワインセラー内には湿度が70%ほど高く保たれているのが理想的。本場ヨーロッパから輸入されてくるワインに、コルクの上部に青いカビが生えているのが見られますが、それは 高い湿度で保たれていた証拠です。中身には全く問題ありません。まだ日本では、ワインの文化が成熟していないので、それらが返品のクレームの対象になってしまうんですね。

 『いいものを飲んでほしい』というワイナリーの気持ちと、日本の消費者のワインに対する固定観念のギャップに、もどかしさと挑戦意欲を感じている中村さんと土屋さん。国内には、ワインの開拓の余地が、まだ十分にありそうだ。
 

つづく

  奥野田葡萄酒醸造のワインセラー


奥野田葡萄酒醸造のワインセラー内のワインボトル

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